大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

松山地方裁判所 昭和62年(行ウ)9号 判決

愛媛県今治市泉川町二丁目四番四二号

原告

門田寒一

右訴訟代理人弁護士

高井實

愛媛県今治市常磐町四丁目五番地一

被告

今治税務署長

渡辺純夫

右指定代理人

吉田幸久

山本孝男

片山朝夫

志賀和之

亀崎邦雄

藤原基忠

香川竹二郎

宮武輝夫

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟内容は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和六〇年一〇月八日付でした原告の昭和五九年分所得税の更正のうち分離課税の長期譲渡所得の金額一二七七万円及び納付すべき税額二八四万八八〇〇円をそれぞれ超える部分並びに重加算税賦課決定を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、昭和六〇年二月二八日、被告に対し、昭和五九年分所得税について、総所得金額を五二七万八八〇〇円、分離課税の長期譲渡所得の金額(租税特別措置法三一条一項)を一二七七万円及び納付すべき税額(申告納税額)を二八四万八八〇〇円とする確定申告書を提出した。

2  被告は、同六〇年一〇月八日付で、原告に対し、原告の昭和五九年分所得税について、総所得金額を五二七万八八〇〇円、分離課税の長期譲渡所得の金額を一七二七万円及び納付すべき税額(申告納税額)を三七四万八八〇〇円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)を行い、併せて重加算税の額を二七万円とする賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)を行った。

3  原告は、昭和六〇年一〇月一五日、被告に対し、右各処分について、その全部の取消を求めて異議の申立てをしたが、被告は、同六一年一月一一日付で、右各異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。そこで、原告は、同年二月三日、国税不服審判所長に対し、各審査請求を行ったが、国税不服審判所長は、同六二年六月二二日付で、右各審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。

4  本件更正処分及び本件賦課決定処分の違法性

(一) 本件更正処分の違法性について

原告は、昭和五九年一月二七日、矢野隆雄に対し、別紙物件目録記載の土地(以下、「本件土地」という。)を代金二〇〇〇万円で売却したので、前記申告においてもその旨を記載し、その代金額に基づいて、原告の昭和五九年分の分離課税の長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額(申告納税額)を前記のとおり算定していたところ、被告は右売買代金を二四五〇万円と認定して、その金額に基づいて原告の昭和五九年分の分離課税の長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額(申告納税額)を前記のとおり算定し、本件更正処分をしているが、右売買代金は真実二〇〇〇万円であるから、被告はその認定を誤っており、本件更正処分のうち、その誤った認定に基づいてされた分離課税の長期譲渡所得の金額につき一二七七万円、納付すべき税額(申告納税額)につき二八四万八八〇〇円をいずれも超える限度で違法である。

(二) 本件賦課決定処分の違法性について

原告は前記申告の申告書に原告の昭和五九年分所得税の課税標準等又は税額等の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したことはないにもかかわらず、被告は原告が右申告書において右の事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装したとして本件賦課決定処分をしているから、本件賦課決定処分は違法である。

(三) 手続きの違法性について

被告は、前記申告の調査をした際に前記売買契約の売買代金の領収書を提示しておらず、その調査は一方的で手落ちがあるから、そのような調査に基づく本件更正処分及び本件賦課決定処分はいずれも違法である。

よって、本件更正処分及び本件賦課決定処分はいずれも違法であるから、原告は被告に対し、それらの取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実は認める。

4  同4の本件更正処分及び本件賦課決定処分が違法であるとの主張は争う。

同(一)のうち、原告が昭和五九年一月二七日矢野隆雄に対し本件土地を二〇〇〇万円で売却したとの事実は否認し、被告が右売買代金を二四五〇万円とした事実は誤っており、本件更正処分のうち、その誤った認定に基づいてされた分離課税の長期譲渡所得の金額につき一二七七万円、納付すべき税額(申告納税額)につき二八四万八八〇〇円をいずれも超える限度で違法であるとの主張は争い、その余の事実は認める。

同(二)は争う。

同(三)は争う。

三  被告の主張

1  本件更正処分の内容は、以下に述べるとおり適法である。

(一) 総所得金額について

原告の昭和五九年分の総所得金額は五二七万八八〇〇円である。

(二) 分離課税の長期譲渡所得の金額について

(1) 計算

本件土地の譲渡に係る分離課税の長期譲渡所得の金額は、本件土地の売買代金額二四五〇万円から必要経費等の額と同額の七二三万円を控除した一七二七万円である。

(2) 本件土地の売買代金額について

本件土地の売買代金額は、次の理由により二四五〇万円と認めるのが相当である。

イ 契約書について

矢野隆雄が原処分の調査に際し被告に提出した昭和五八年一一月一八日作成日付の不動産売買契約書(以下、「昭和五八年一一月一八日付売買契約書」という。)には、売買代金額は二四五〇万円である旨が記載されている。

ロ 支払代金額について

矢野隆雄は、原告に対し、本件土地の売買につき、昭和五八年一一月一八日に手付金として現金で二〇〇万円を、同五九年一月二七日残代金として額面一八〇〇万円の伊予銀行保証小切手及び現金四五〇万円を交付して合計二四五〇万円を支払った。

ハ 青色申告決算書について

矢野隆雄が昭和五九年分の確定申告書とともに被告に提出した同年分の青色申告決算書には本件土地の取得価額は二四八四万一九〇〇円(本件土地の買入金額二四五〇万円、仲介手数料五万円及び所有権移転登記に伴う司法書士への支払代金二九万一九〇〇円の合計額)である旨が記載されている。

ニ 矢野隆雄の供述について

矢野隆雄は、被告所部の職員の原処分の調査に対してはもとより、高松国税不服審判所の職員の調査に対しても、一貫して本件土地の売買代金額は二四五〇万円である旨を答述している。

(三) 納付すべき税額(申告納税額)について

右(一)及び(二)の所得金額を基礎として計算した納付すべき税額(申告納税額)は三七四万八八〇〇円である。

2  本件賦課決定処分の内容は、以下に述べるとおり適法である。

(一) 原告は、本件土地の売買に関しその売買代金額が二四五〇万円であるにもかかわらず、売買代金額を二〇〇〇万円と記載した昭和五九年一月五日作成日付の不動産売買契約書(以下、「昭和五九年一月五日付売買契約書」という。)を作成し、これに基づいて分離課税の長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額(申告納税額)を過少に計算・記載して昭和五九年分の確定申告書を提出しているところ、この事実は国税通則法六八条一項に規定する課税標準等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装に該当する。

(二) 本件更正処分により納付すべきこととなる税額九〇万円(1(三)の納付すべき税額(申告納税額)三七四万八八〇〇円から原告の提出した確定申告書に記載された納付すべき税額(申告納税額)二八四万八八〇〇円を差し引いた金額)を基にして計算した重加算税の額は二七万円である。

3  調査の適法性について

本件土地の前記売買に関する領収書のうち、四五〇万円(昭和五八年一一月一八日付売買契約書に記載された売買代金額二四五〇万円と昭和五九年一月五日付売買契約書に記載された売買代金額二〇〇〇万円との差額)の部分についての領収書を提示していないが、それは、原告が右売買の売買代金額を二〇〇〇万円と見せかけるために作成していなかったので、これを提示しえなかったのであって、被告の行った原告の昭和五九年分の所得税の申告の調査が一方的で手落ちがあったわけではなく、被告の右調査は適法である。

四  原告の反論

1  被告の主張1は争う。

(一) 同1(一)の事実は認める。

(二)(1) 同2(二)(1)の事実のうち、必要経費等の額が七二三万円であることは認めるが、その余は否認する。本件土地の譲渡に係る分離課税の長期譲渡所得の金額は、前記のとおり本件土地の真実の売買代金額二〇〇〇万円から必要経費等の額七二三万円を控除した一二七七万円である。

(2) 同2(二)(2)の事実は否認する。本件土地の売買代金額は前記のとおり二〇〇〇万円である。

イ 契約書について

本件土地の売買契約に関しては、売買代金額を二四五〇万円と記載している昭和五八年一一月一八日付売買契約書と二〇〇〇万円と記載している昭和五九年一月五付売買契約書とが作成されているところ、真実の売買契約は、昭和五九年一月五日付売買契約書であって、昭和五八年一一月一八日付売買契約書は虚偽の契約書である。

昭和五八年一一月一八日付売買契約書は、矢野隆雄から原告に対し、金融機関から融資を受けるためには契約書が必要であり、しかも金融機関が売買代金を融資する際には売渡金額全額を融資しないので、売渡金額を真実のそれよりも過大に記載した契約書を作成して欲しいとの依頼があり、これに原告が応じて作成したものである。

したがって、昭和五九年一月五付売買契約書に押印されている原告の印鑑は、右契約書が真実のものであるから、実印を押印しているが、昭和五八年一一月一八日付売買契約書に押印されている原告の印鑑は、単に矢野隆雄が銀行へ融資を申し込むために作成したものであるから、通常使用している印鑑を押印しており、実印を押印していない。

原告は昭和五八年以内に本件土地を譲渡すれば、それによって生じた所得に対し分離課税の短期譲渡所得としての課税がされることから、昭和五八年以内に本件土地を譲渡する意思はなかったので、昭和五八年一一月一八日付売買契約書を真実に作成するはずがない。

ロ 支払代金額について

原告は、矢野隆雄から、本件土地の売買につき、昭和五八年一一月一八日に手付金として現金で二〇〇万円を、同五九年一月二七日残代金として現金で一八〇〇万円の支払を受けただけであって、それ以上に支払を受けたことはない。

ハ 青色申告決算書について

矢野隆雄が、青色申告をする際に、被告に対し、当初から計画的に虚偽の申告をする意図で、記載したものである。

ニ 矢野隆雄の供述について

矢野隆雄は虚偽の申立てをしている。

ホ 本件土地の取引相場について

本件土地の売買代金額を二四五〇万円とすると、その一坪当りの価格は約三一万円となるが、現在でも本件土地の一坪当りの価格はせいぜい二五万円であるから、前記売買契約書の時点で売買代金額を二四五〇万円とするような契約をすることはありえない。

ヘ 手付金額について

手付金額が売買代金額の一割以下ということは通常ないから、本件土地の売買代金額が二四五〇万円であれば、その手付金額は二四五万円以上となるはずであるにもかかわらず、前記売買契約の手付金額は二〇〇万円であり、このことからも、右売買契約の売買代金額は二〇〇〇万円である。

(三) 同1(三)の事実は否認する。納付すべき税額(申告納税額)は二八四万八八〇〇円である。

2  同2は争う。

(一) 同2(一)の事実のうち、原告が本件土地の売買に関しその売買代金額を二〇〇〇万円と記載した昭和五九年一月五付売買契約書を作成し、これに基づいて分離課税の長期譲渡所得の金額及びこれに係る所得税を計算して昭和五九年分の確定申告書を提出したことは認めるが、その余は否認する。

(二) 同2(二)の事実は否認する。

3  同3の事実は否認する。

五  被告の再反論

1  契約書について

(一) 矢野隆雄には銀行から融資を受けるために契約書を作成する必要はない。すなわち、矢野隆雄は、伊予銀行桜井支店唐子台出張所から二〇〇〇万円及び立花農業協同組合から五〇〇万円をそれぞれ借り入れて本件土地の譲受けに要する資金に充てる予定にして、昭和五八年一一月一八日以前にそれぞれからその承諾を得ており、また矢野隆雄が右唐子台出張所から受けることができる融資の枠は十分に余裕があり、さらに銀行が土地を担保に融資を行う場合の融資限度額は、通常時価の七〇パーセントとされているが、それはあくまでも当該土地の時価が基準であって、当該土地の売買代金額とは関係がなく、他に担保があれば時価の一〇〇パーセントを融資する場合もあり、矢野隆雄の場合は、他に担保もあり、信用も高いから、真実の売買代金額を銀行に申告しても全額の融資を受けられたものと思われるので、矢野隆雄が、銀行から融資を受けるために、売買代金額を偽って真実の売買代金額より高額の金額を記載した売買契約書を必要としたとする理由はない。なお、矢野隆雄は、右唐子台出張所に対し、当初から、融資時期を昭和五九年一月二七日として本件土地の売買代金の融資を申し込んでおり、右唐子台出張所の矢野隆雄に対する右融資が同人の信用不足から遅れたことはない。

(二) 不動産の取引において、契約書を作成する場合、当事者は、必ずしも契約書に押捺する印鑑に実印を使用するとは限らない。また、何らかの事情で実印を使用する場合には、相手方当事者にも実印の押捺を要求するのが通常であるにもかかわらず、矢野隆雄は昭和五九年一月五付売買契約書に認印を押捺しているうえ、同人は原告が右契約書に実印を押捺していることに気付かなかったのであるから、原告が右契約書に実印を押捺したからといって、右契約書が真実の契約書であるとはいえない。

(三) 土地の譲渡所得に対する分離課税が長期譲渡所得となるか、あるいは短期譲渡所得となるかは、契約の締結時期ではなく、当該土地の引渡時期を基準として判断するものであり、このことは不動産取引にあたる者にとっては常識であるから、原告が分離課税の短期譲渡所得となることをおそれて昭和五八年中に本件土地を売買するはずがないとはいえない。

なお、昭和五八年一一月一八日付売買契約書には本件土地の引渡日を昭和五九年以降と記載されている。

(四) 本件土地の売買の手付金は昭和五八年一一月一八日に支払がされているところ、手付は契約締結の証拠たる性質を有するものであるから、手付金が授受された同日に契約が成立したものというべきであり、不動産の売買において契約が成立しながら真実の契約書を作成せずに虚偽の契約書のみを作成することは考えられないので、同日に作成された昭和五八年一一月一八日付売買契約書をもって真実の売買契約書というべきであり、また昭和五九年一月五付売買契約書には手付金を契約成立と同時に支払うこととされており、右契約書には実際の支払日と異なる記載があるから、右契約書は、虚偽の契約書である。

(五) 銀行に提出するための契約書はこれを一通作成すれば足りるにもかかわらず、昭和五八年一一月一八日付売買契約書は三通作成されていることから、右契約書は銀行に提出するめに作成されたものとはいえない。

(六) 昭和五九年一月五付売買契約書は、原告が分離課税の長期譲渡所得の金額及びこれに係る所得税額を過少に計算して申告することを目的として作成されたものである。

2  支払われた売買代金について

(一) 昭和五八年一一月一八日に前記唐子台出張所の矢野隆雄名義の普通預金口座から二五〇万円が引き出され、同日五〇万円が預け入れられており、また同五九年一月二七日に右出張所の同人名義の当座預金口座から二〇〇〇万円が普通預金口座から二五〇万円がそれぞれ引き出されている。

(二) 矢野隆雄が本件土地の売買契約に関して原告に支払った手付金が二〇〇万円であるからといって、右売買代金が二〇〇〇万円であるとまではいえない。なぜなら、矢野隆雄は、右契約の締結にあたって、手付金が二五〇万円必要であると考えて、前記唐子台出張所の同人名義の普通預金口座から右同額の現金を出金し、右金員を持参して右契約締結の場に持参して臨んだところ、右契約に立ち会った真鍋謹志から二〇〇万円の手付金でよいと言われたことから、手付金として持参していた二五〇万円のうちから二〇〇万円を支払い、残金五〇万円を右口座に戻したのであり、矢野隆雄が右契約締結の場に二五〇万円を手付金として臨んでいるのであるから、右契約の売買代金は、二〇〇〇万円ではなく、二四五〇万円である。

(三) 矢野隆雄は、昭和五九年一月二七日、原告に対し、本件土地の売買代金として支払った二二五〇万円のうち一八〇〇万円は、額面一八〇〇万円の前記唐子台出張所の自己宛小切手により行ったものであり、現金で支払ったものでははない。すなわち、矢野隆雄は、右同日、右唐子台出張所の自己の当座預金口座から二〇〇〇万円を出金するとともに、二〇〇万円のみを現金化し、残りの一八〇〇万円を右唐子台出張所の自己宛小切手口への振替を行い、それに基づいて右唐子台出張所の自己宛小切手が振り出され、これを原告に交付し、原告は、同日、右小切手を伊予銀行日吉支店の二条建設の当座預金口座に入金している。また、同日の右唐子台出張所においては、入金が総額で一六六七万六六九四円、出金が総額で一六四〇万六四六四円であり、いずれも一八〇〇万円に達していない。

(四) 矢野隆雄は、昭和五九年一月二七日、原告に対し、本件土地の売買代金として、額面一八〇〇万円の前記唐子台出張所の自己宛小切手を手交したほか、現金で四五〇万円を支払った。すなわち、前記(三)で現金化した二〇〇万円と同人の右唐子台出張所の普通預金口座から出金した二五〇万円との合計四五〇万円を、矢野隆雄は右同日原告に交付したものである。

六  原告の再々反論

1  契約書について

(一) 前記唐子台出張所は、昭和五八年一二月一六日矢野隆雄からの本件土地の売買代金の融資の申込を受けたのであるから、昭和五八年一一月一八日付売買契約書作成以前に、矢野隆雄に対する右代金の融資を決定してはいなかった。また、矢野隆雄は、同五九年一月一〇日ころまで右代金のうち手付金を控除した残金の支払をする旨約していたにもかかわらず、同人が右残代金を用意できなかったことから、二度もその支払を延期して、原告がその支払を受けたのは、当初の約束から半月以上経過した同月二七日であって、矢野隆雄に経済的信用が十分にあったとはいえない。殊に、矢野隆雄は、スーパーマーケットを経営するかたわら、建築請負業を行い、またガソリンスタンドの経営を計画するなど資金需要が多かったので、金融機関からできるだけ多額の融資を受けようとして昭和五八年一一月一八日付売買契約書を作成したものである。

(二) 昭和五九年一月五付売買契約書には、手付金についての記載がなされており、また残額についても売買代金額から手付金を差し引いた額と記載されている。

2  支払われた売買代金について

(一) 本件土地の売買契約締結の場で、手付金の額が話題となったことはない。

(二) 矢野隆雄が前記駆唐子台出張所から二〇〇〇万円の融資を受け、また右唐子台出張所の同人名義の普通預金口座から二五〇万円を出金していたとしても、同人が右金員を本件土地の売買代金の支払いに充てたとはかぎらない。

(三) 矢野隆雄は前記唐子台出張所の同人名義の普通預金口座から司法書士に支払ったというが、本件土地の所有権移転登記に関する登録免許税等の支払金額二九万一九〇〇円の出金状況が乙第二〇号証によって見出しえない。

第三証拠

本件訴訟記録中の証書目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1ないし3及び被告の主張1(一)の各事実、必要経費等の額が七二三万円であること並びに原告が本件土地の売買に関しその売買代金額を二〇〇〇万円と記載した昭和五九年1月五日付売買契約書を作成し、これに基づいて分離課税の長期譲渡所得の金額及びこれに係る所得税を計算して昭和五九年分の確定申告書を提出したことは、いずれも当事者間争いがない。

二  本件更正処分の内容の適法性について

1  本件更正処分のうち、総所得金額を五二七万八八〇〇円とした部分については、前記のとおり当事者間に争いがない。

2  本件土地の売買に係る分離課税の長期譲渡所得の金額について

(一)  被告は、原告が矢野隆雄に売り渡した本件土地の売買代金額が二四五〇万円であるから、本件土地の売買に係る分離課税の長期譲渡所得の金額は右売買代金二四五〇万円から必要経費等七二三万円を控除した一七二七万円であると主張し、原告は、右売買代金額が二〇〇〇万円であるから右譲渡所得の金額は右売買代金二〇〇〇万円から必要経費等七二三万円を控除した一二七七万円であると主張する。そこで、以下右売買代金の額について検討する。

(二)  前記争いのない事実、成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証、第三ないし八号証、第一五号証、原本の存在及び成立に争いのない乙第一三号証の一、二、第一四号証、第二〇号証、証人真鍋謹志の証言により真正に成立したものと認められる甲第六号証、乙第一六号証、証人矢野隆雄の証言により原本の存在及びに真正に成立したものと認められる乙第九、第一〇号証、第一一号証の一、二、第一二号証、証人宇野敏詳の証言により真正に成立したものと認められる乙第一七号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一八号証の一、弁論の全趣旨により原本の存在及び真正に成立したものと認められる乙台一八号証の三、証人真鍋謹志、同矢野隆雄及び同宇野敏詳の各証言、原告本人尋問の結果を総合すれば、以下の事実が認められ、これに反する証人真鍋謹志の証言中及び原告本人尋問中の各供述部分は採用しえず、他に右認定を動かすに足る証拠はない。

(1) 原告は、昭和四八年一一月一日今治市から本件土地を売買により購入して、本件土地を自己が代表取締役を務める株式会社二條建設の資材置き場として使用していた。矢野隆雄は、昭和五五年ころから本件土地をその道を挟んで向かい側にある同人の経営するスーパーマーケットの駐車場として無償で借り受けてきた。

(2) 原告と矢野隆雄との間において、昭和五八年八月ころから、真鍋謹志を仲介人として、矢野隆雄が原告から本件土地を買い受ける話が持ち上がり、同年一〇月中旬ころ売買代金額の折衝がなされ、本件土地の近隣の土地が一坪当たり二七万円で売買されたこともあって、本件土地の売買代金額を二四五〇万円(一坪当たり三一万〇四八〇円)とすることに合意し、同年一一月一八日に契約を成立させることとなった。

(3) 矢野隆雄は、昭和五八年一一月一八日、株式会社伊予銀行桜井支店唐子台出張所の同人名義の普通預金口座から二五〇万円の払戻を受け、右金員を本件土地の売買契約の手付金として持参して、株式会社二條建設の事務所を訪れた。矢野隆雄、原告及び真鍋謹志は、株式会社二條建設の事務所において、不動文字以外の部分を真鍋謹志が記載した昭和五八年一一月一八日付売買契約書(二通)のそれぞれの各下の部分に捺印をし、右二通の契約書に割り印をした。矢野隆雄は、原告に対し、真鍋謹志の指示により右売買契約の手付金として持参した現金二五〇万円のうちから二〇〇万円を支払い、原告からその領収書を受領した。ところが、右契約書及び領収書にそれぞれ記載されている矢野隆雄の「隆」の字が誤っていたので、いずれもこれを訂正したものの、右訂正を明らかにするための捺印を、右領収書の訂正部分のみならず、右契約書の訂正部分にまで原告の印判で捺印してしまった。矢野隆雄は、その後、右契約書一通、領収書及び右持参して二五〇万円のうち残金五〇万円を持ち帰り、右五〇万円を株式会社伊予銀行桜井支店唐子台出張所の矢野隆雄名義の普通預金口座に入金した。

(4) 矢野隆雄は、その後、真鍋謹志から売買代金が二〇〇〇万円と記載されている昭和五九年一月五日付売買契約書への捺印を求められ、これに応じて、同人が持参した同契約書の矢野隆雄の名下に捺印をして、これを真鍋謹志に交付した。真鍋謹志は、その際、矢野隆雄に対し、原告が右金額を超える部分の売買代金額の領収書を発行しないことをほのめかした。

(5) ところで、矢野隆雄は、昭和五八年一〇月ころ、株式会社伊予銀行桜井支店唐子台出張所に対し、本件土地の購入代金の支払いに充てるため、二〇〇〇万円の融資方を打診し、そのころ同出張所から右融資を受けられる見込みであるとの内諾を得ていた。そこで、矢野隆雄は、昭和五八年一一月一八日付売買契約書をその作成後直ちに右出張所に持参し、同年一二月一六日、右出張所に右融資を受けるため、売買代金額を二四五〇万円、支払日を同五九年一月二七日とする融資申込書を作成して提出した。

(6) 矢野隆雄、原告及び真鍋謹志は、昭和五九年一月二七日、株式会社伊予銀行桜井支店唐子台出張所に集まり、矢野隆雄が右出張所から二〇〇〇万円を借り受けてこれを右出張所の同人名義の当座口座に振り込ませ、矢野隆雄振出名義の額面二〇〇〇万円の小切手を右出張所に振り出し、真鍋謹志の指示により右出張所から額面一八〇〇万円の自己宛小切手を振り出させ、残額二〇〇万円を現金により交付を受け、この二〇〇万円と右出張所の同人名義の普通預金口座から出金した二五〇万円とを合計した現金四五〇万円と右小切手とを原告に交付し、原告から一八〇〇万円の領収書を受けた。原告は、矢野隆雄に本件土地の所有権移転登記をするのに必要な書類を交付し、同日、同月一四日売買を原因とする所有権移転登記が、同月二四日、根抵当権者を株式会社伊予銀行、債務者を矢野隆雄及び極度額を二〇四〇万円とする根抵当権設定登記がそれぞれなされた。

(7) 原告は、株式会社二條建設名義で、昭和五九年一月二七日、株式会社伊予銀行日吉支店に右銀行桜井支店唐子台出張所振出の右小切手を交換依頼に出し、右小切手は翌日交換され、右日吉支店の株式会社二條建設名義の当座預金口座に一八〇〇万円が入金された。

(三)  右認定事実によれば、原告が昭和五八年一一月一八日矢野隆雄に売り渡した本件土地の売買代金額は二四五〇万円であると認められるから、本件土地の譲渡に係る分離課税の長期譲渡所得の金額は、右売買代金二四五〇万円から必要経費等七二三万円を控除した一七二七万円であると認めるのが相当である。

(四)  原告は、本件土地の売買代金額が二〇〇〇万円であるとるる主張するので、以下右主張の要点につき検討する。

(1) 原告は、売買代金額を二〇〇〇万円と記載する昭和五九年一月五日付売買契約書が真実の契約書であって、売買金額を二四五〇万円と記載する昭和五八年一一月一八日付売買契約書は虚偽の契約書であるから、売買代金額は二〇〇〇万円であると主張し、その理由として、矢野隆雄は、銀行から融資を受けるために銀行に契約書を提出する必要があり、同人の経済的信用が十分ではなく、あるいは事業を拡張するために、右契約書に真実の売買代金額より高額の売買代金額を記載して多額の融資を得ようとして昭和五八年一一月一八日付売買契約書を作成したのであり、また昭和五九年一月五日付売買契約書に原告は実印を押捺しているが、昭和五八年一一月一八日付売買契約書には原告は実印を押捺しておらず、さらに昭和五八年に本件土地を譲渡すれば分離課税に係る短期譲渡所得となるから原告が同年中に契約するはずがない、などと述べる。

矢野隆雄は、株式会社伊予銀行桜井支店唐子台出張所から本件土地の売買代金の融資を受けるために、右出張所に本件土地の売買契約書を提出する必要があり、また右出張所に昭和五八年一一月一八日付売買契約書を提出したことは、証人矢野隆雄及び同宇野敏詳の各証言により認められるが、前掲乙第七号証、証人矢野隆雄及び同宇野敏詳の各証言によれば、矢野隆雄が右出張所に右契約書を提出した当時、右伊予銀行は、矢野隆雄の経済的信用に対して何ら不安はなく、また矢野隆雄所有の不動産に対し根抵当権を設定していたこともあって、同人に対し、二〇〇〇万円程度の融資を行うことは容易にできたのであり、さらに矢野隆雄は同人の経営する事業を拡張する予定もなかったことが認められ、これに反する証人真鍋謹志の証言部分は採用しえず、他に右認定を動かすに足る証拠はない。なお、原告は、矢野隆雄の事情で本件土地の売買代金の支払いを二度ほど延期したと主張し、証人真鍋謹志の証言及び原告本人尋問中には右主張に沿う部分も存するが、前掲乙第七号証及び証人矢野隆雄の証言に照らして採用しえず、他に右主張を認めるに足る証拠はない。右認定事実によれば、矢野隆雄が銀行融資を受けようとしたのは二〇〇〇万円であったから、右出張所に虚偽の売買代金額を記載した契約書を提出してまで、右金額を超える多額の融資を得る必要はなかったというべきである。

また、かりに原告主張のとおり原告が昭和五九年一月五日付売買契約書の原告名下には実印を押捺し、昭和五八年一一月一八日付売買契約書の原告名下には実印以外の印鑑を押捺していたとしても、契約書の作成は必ずしも実印を押捺しなければならないものきではないから、そのことのみを理由として昭和五九年一月五日付売買契約書が真実の契約書であって、昭和五八年一一月一八日付売買契約書が虚偽の契約書であるとまではいえない。(なお、右契約の相手方である矢野隆雄は前記実印の使用について気付いていなかったというのであるから、右実印使用の意義は一層薄いものと言わざるを得ない。)

原告は、また、本件土地を昭和五八年中に譲渡すれば短期譲渡所得になり、税法上不利であるから、同年中にそのような契約を締結するはずがないと主張し、確かに原告は本件土地を昭和四八年中に取得しているから、その譲渡所得の収入すべき金額の時期によっては同五八年中に本件土地の売買が分離課税の短期譲渡所得となりうるが、所得税法三六条一項の譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、譲渡所得の基因となる資産の引渡があった日によるものと解されるから(乙第一九号証の所得税基本通達参照)、同五八年中に締結された売買契約であっても必ずしも右所得となるわけではなく、すなわち、原告が今治市から本件土地の引渡を受けた日は明らかではないが、前掲甲第一号証によれば同四八年一一月一日付売買を原因として同月二六日所有権移転登記がされているので、そのころ引渡も受けたものと推認されるところ、前記乙第一号証によれば、昭和五八年一一月一八日付売買契約書には本件土地の引渡期日を売買代金完済の時すなわち昭和五九年一月中旬ころとされていたのであるから、右契約書により本件土地の売買契約を締結したとしても、収入すべき時期は本件土地を取得した日から一〇年を経過することになり、したがって、その売買代金は右短期譲渡所得にあたらないといいうるのであって、右の事情は本件土地の売買契約の仲介者であった真鍋謹志も知っていたことを自認しているのであるから、右主張は到底これを認めることができない。

したがって、右に認定したとおり、昭和五九年一月五日付売買契約書が真実の契約書であり、昭和五八年一一月一八日付売買契約書が虚偽の契約書であるとする原告の主張は採用しえず、前記認定のとおり昭和五八年一一月一八日付売買契約書が真実の契約書というべきである。

(2) 原告は、昭和五九年一月二七日矢野隆雄から支払を受けたのは現金一八〇〇万円のみであるから、これに手付金二〇〇万円とを合計した二〇〇〇万円が売買代金額であると主張し、証人真鍋謹志証言及び原告本人尋問中には、右主張に沿う部分が存し、また証人真鍋謹志及び同矢野隆雄の各証言並びに原告本人尋問の結果によれば、原告が作成して矢野隆雄に対し交付した昭和五九年一月二七日の領収書は一八〇〇万円のもの(乙第一五号証)しか存在しないことが認められる。

しかしながら、前掲乙第一一号証の一、二、第一二号証、第一三号証の一、二、第一四、第一七号証、第一八号証の一ないし三、第二〇号証によれば、矢野隆雄は、右同日、株式会社伊予銀行桜井支店唐子台出張所から二〇〇〇万円を同人の当座預金口座に入金してもらう方法により借り入れ、これに基づいて、同額の小切手を右出張所に振出し、右出張所から額面一八〇〇万円の自己宛小切手を振り出してもらうとともに、二〇〇万円の現金の交付を受け、また右出張所の同人名義の普通預金口座から二五〇万円を出金し、右一八〇〇万円の小切手は同人によって現金化されることなく、同日原告の経営する株式会社二條建設が右銀行日吉支店に右小切手を交換依頼に出し、同会社名義の当座預金口座に一八〇〇万円が入金されていることが認められ、かつ、右矢野が右現金四五〇万円を他に使用した形跡は認められないから、証人矢野隆雄の証言どうり本件土地の売買代金として原告に支払われたと認めるのが相当であって、これに反する前記証人真鍋謹志の証言及び原告本人尋問中の供述部分は採用しえない。なお、原告は、証人矢野隆雄が司法書士に対する登録免許税等の支払も同出張所の同人の普通預金より支払ったと証言しているが、乙第二〇号証の預金元帳にはその出金の事実は存しないと主張し、同証人は、自己が司法書士に支払った本件土地の所有権移転登記に関する費要約二〇万円も伊予銀行から出金したと供述しているが、その日時、金額等の詳細が明らかでないから、乙第二〇号証に右証言に相当する記載がないからといって、同証人の証言全般の信憑性を損わせるものとは言いがたい。

(3) 原告は、手付金は通常売買代金額の一割以上であるところ、本件土地の売買契約について交付された手付金は二〇〇万円であるから、売買代金額は二〇〇〇万円であると主張する。

本件土地の手付金が二〇〇万円であることは前記認定のとおりであるが、手付金が売買代金額の一割以上であると必ずしもいえないし、また前記認定のとおり原告は右契約締結の場所に手付金として二五〇万円を持参していたことをも考え合わせれば、本件土地の手付金が二〇〇万円であることから直ちに売買代金額が二〇〇〇万円であるとは認めえない。

(4) 原告は、本件土地の売買代金額を二四五〇万円とすると、一坪当たりの価値が高すぎると主張し、証人真鍋謹志の証言中にもこれに沿う供述部分が存する。

しかしながら、前記認定のとおり本件土地の近隣の土地が本件売買契約以前に一坪当たり約二七万円で売買されていることからして、右売買代金額を二四五〇万円とした場合の一坪当たりの価格約三一万円は不相当に高い価格であるとはいえず、右主張も採用しえない。

(5) 右のとおり、本件土地の売買代金額が二四五〇万円ではなく、二〇〇〇万円であるとする原告の主張は認められない。

3  納付すべき税額(申告納税額)について

原告が昭和五九年分所得として納付すべき税額(申告納税額)は、前記一1記載の当事者に争いのない二八四万八八〇〇円に、前記2で認定された分離課税に係る長期譲渡所得の金額のうち一二七七万円を超える部分である四五〇万円(前記2で認定された一七二七万円から前記1記載の当事者に争いのない一二七七万円を控除した額)に一〇〇分の二〇を乗じた九〇万円を加えた、三七四万八八〇〇円である。

三  本件賦課決定処分の内容の適法性について

被告は、原告が昭和五九年分所得税の分離課税に係る長期譲渡所得の金額の課税標準等の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい又は仮装したから、国税通則法六十八条一項に従って原告に二七万円重加算税を賦課した本件賦課決定処分は適法にされたものであると主張し、原告は、右事実を隠ぺい及び仮装していないから、右決定を違法であると反論するので、以下検討する。

1  前記認定事実によれば、原告は、被告に対し、昭和五九年分所得税を申告するに当たり、本件土地の売買代金額が真実は二四五〇万円であるにもかかわらず、右売買代金額を二〇〇〇万円と記載した昭和五九年一月五日作成日付の不動産売買契約書を作成し、これに基づいて分離課税の長期譲渡所得の金額及びこれに係る所得税を過少に計算して昭和五九年分の確定申告書を提出しているところ、この事実は国税通則法六八条一項に規定する課税標準等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい又は仮装に該当するものと認められ、右事実を隠ぺいも仮装もしていないとする原告の主張は採用しえない。

2  そこで、原告に賦課されるべき重加算税の額を計算するに、前記二3に認定の原告が真実納付すべき昭和五九年分の税額(申告納税額)三七四万八八〇〇円から当事者間に争いのない原告の提出した確定申告書に記載された納付すべき税額(申告納税額)二八四万八八〇〇円を控除した、原告が本件更正処分により納付すべきこととなる税額九〇万円に一〇〇分の三〇の割合を乗じて計算した二七万円が重加算税の額ということとなる。

四  手続きの適正について

原告は、被告の調査において本件土地の売買代金支払の領収書が提示されておらず、調査は一方的で手落ちがあるから、そのような違法な調査に基づく本件更正処分及び本件賦課決定処分はいずれも違法であると主張する。

しかしながら、前記認定の事実、前掲乙第四、第五号証及び証人矢野隆雄の証言によれば、原告は、本件土地の売買代金額のうち四五〇万円(昭和五八年一一月一八日付売買契約書に記載された売渡金額二四五〇万円と昭和五九年一月五日付売買契約書に記載された売渡金額二〇〇〇万円との差額)の部分についての領収書を作成しておらず、したがって矢野隆雄は右領収書を原告から交付を受けて所持しているわけではないことが認められ、これに反する証人真鍋謹志の証言及び原告本人尋問中の供述部分はいずれも採用しえず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。右認定事実によれば、被告の調査において本件土地の売買代金支払の領収書が提示されていなかったとしても、そのことから直ちに右調査が一方的で手落ちがあったとはいえない。

五  以上のとおりであって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 八束和廣 裁判官 高林龍 裁判官 牧賢二)

物件目録

所在 愛媛県今治市唐子台東三丁目

地番 一五番二

地目 宅地

地積 二六〇・八八平方メートル

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例